株主の皆様におかれましては日ごろより多大なるご高配を賜わり、誠にありがとうございます。
2023年6月期第2四半期は、IoT関連機器の設置、保守運用ニーズが高まり、期初より好調なスタートを切ることができました。
モバイルエンジニアリングサービスでは、半導体不足やコロナ影響と物流遅延の影響で基地局工事に遅れが生じたため、上半期に計画していた売上を達成することができませんでした。
一方、IoTエンジニアリングサービスでは新規顧客、新規案件の獲得が進み、IoT機器の設置台数は計画対比120%以上で推移しています。また、保守・ストック案件も順調に増えてきており第2の柱として着実に成長しています。
今後も中長期成長戦略を着実に実行することで、企業価値の最大化に努めてまいりますので、変わらぬご理解とご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
私の社会人となって最初の仕事は不動産業界の営業職でしたが、リーマン・ショックを機に転職を決意しました。通信業界を選んだのは、通信テクノロジーへ強く興味があったからです。スマホが登場し、通信規格が3Gから4Gへと移行する時期だったので、この先の進化に仕事で携わってみたいという想いが膨らんでいました。ベイシスへ入社したのは、それから数年後の2014年です。私が所属していた事業部がベイシス(当時はベイシスエンジニアリング)へ譲渡されたので20名弱のメンバーと一緒に異動しました。
入社後は基地局設備の工事を行う部門に配属され、大手通信キャリアから受注した設備工事の施工管理を担当。携帯電話基地局だけでなく、サッカースタジアムに国内最大規模のWi-Fi設備を設置するというビッグプロジェクトも担当しました。
その後、IoT分野へ進出するために新設されたセクションの部長となり、電力スマートメーターの取替プロジェクトを推進しました。日本は少子高齢化が進み、毎月の検針作業を担える人材も不足しています。これはその課題を解決するためのプロジェクトでした。IoT分野は最前線で新たなテクロジーに触れながら社会を変えることに大きなやりがいを感じていましたので、2017年に取り替えた機器台数が100万台を突破したときは本当にうれしかったですね。
2020年に取締役兼執行役員に就任し、現在は事業開発本部 本部長としてIoTエンジニアリングサービス全般に携わっています。
電力スマートメーターへの取替プロジェクトからスタートしたベイシスのIoTエンジニアリングサービスは、NCU(ガスメーターに設置する機器)、スマートロック、防犯カメラ、ビーコン、各種センサ(水位・温度・湿度・見守りなど)へと専門領域を拡大。現在は、これらの設置工事の請負業務を中心とするフロー型ビジネスから、運用・監視・保守までをワンストップで提供するストック型ビジネスへの移行を目指しています。
そのなかで立ち上げたサービスの1つに『スマセッチ』があります。これはIoT機器などを活用したスマートインフラを構築する際に、業者選定・管理、機器の取り付けから運用・保守まで一括で当社にお任せいただけるプラットフォーム。適正価格で広域にスマートインフラを構築できます。
その一方、IoTの設置でスマート農業を支援するために農水省が設置した「農業農村情報通信環境整備推進体制準備会」に参画しました。スマート農業は、ロボットやICTを活用して省力化・精密化や高品質生産を目指す、農業の新たなスタイル。これを事業として推進することで人口減少・高齢化の進行、新たな担い手や後継者不足などの課題を解決します。
通信環境に難のある地域の農業の支援は、携帯電話やLPWA、ローカル5Gといった基地局の建設とIoT機器設置のノウハウを持つ当社だからこそ強みを発揮することができるミッションです。私自身の話をすれば、私もいずれ父親の実家の農地を相続することになります。会社を辞めて農家になる予定は今のところはありませんが、スマート農業の広がりにより自身のルーツがある農業の役に立てることをうれしく思っています。
電力、ガス、通信事業者様をはじめ、IoT技術を必要としているお客様にベイシスが選ばれる理由は3つあります。
1つめは自社開発のクラウドシステム、AI、RPAなどを組み合わせて現場の生産性を高められること。インフラ整備の現場は人材不足や高齢化もあってIT化が進んでいるとは言いがたく、いまだにFAXでやりとりするケースもあるほど。その現状をIT技術で変えられるのがベイシスなのです。
2つめはフィールドエンジニアリングのプロフェッショナルであること。IoTデバイスの設置から運用・保守までのトータル受注で施工費用を抑えられるので、技術力と価格の両面でお客様のご要望を叶えることが可能です。
そして3つめは全国的な展開力です。全国に約370社のパートナー企業を持つベイシスなら、お客様の必要とするIoT技術をお客様の望む価格でスピーディに展開できます。通信設備の建設会社、IoTデバイスメーカーの子会社、大手電機メーカーのグループ会社、地場の電気工事店などが競合相手になりますが、展開力・価格競争力ともベイシスの優位は揺るぎません。
これらの特徴・強みのべースになっているのは、モバイルエンジニアリングサービスの創成期、通信事業者様向けに開発・提供した技術力とサービスです。当時は他社との差別化に苦労しましたが、その経験も活かせていることをIoTエンジニアリングサービスの責任者として新規開拓に取り組むなかで改めて気づきました。
スマートメーターについては、水道のスマートメーター化がそう遠くないうちにスタートします。NCUはこれからさらに普及が進み、2025年には次世代型の電力スマートメーターが登場する予定ですので、当社のIoTエンジニアリングサービスは中長期的な視点でも期待が持てます。
IT化、DX化については、資金不足で手が付けられないという企業も少なくありませんが、近年は補助金や助成金制度が整備されており、うまく活用すれば低コストでの導入が可能です。また、新型コロナウイルス感染症や半導体不足の影響で少し停滞が見られたIoTデバイスの設置ニーズも回復しつつあり、フロー型からストック型への移行はさらに加速すると考えています。5Gの普及によって新しいサービスが登場する可能性もありますので、あらゆる方向にアンテナを張ってテストマーケティングを重ね、できることを増やしていきたいですね。
ビジネスの方向性としては、少子高齢化による担い手不足を解消できる取り組みを優先したいと考えています。喫緊の課題を抱えているのは物流や建設業界ですね。配送業務の省人化や大型重機の遠隔操作については、すでに具現化に向けての取り組みをスタートしています。スケールの大きなところでは、スマートシティ(※1)やスマートアイランド(※2)などもありますが、私が特に注目しているのはロボティクスです。ロボットも作業効率や生産性の向上、担い手不足を解消するテクノロジーです。将来、複数のロボットをプラットフォームで制御する時代が来たときに問われるのは、当社の強みである通信技術。その軸は高速・大容量で多数のIoTデバイスを同時接続できる5Gです。ですから今後は、基地局設置業務を通じて5Gの普及に努め、ロボティクスとプラットフォームを含めたIoTエンジニアリングサービスの可能性を探っていきます。今すぐにできること、未来へつなげていくことを明確にして、テクノロジーの進歩に合わせて事業を展開してゆき、担い手不足の解消や地方創生に貢献します。
(※1)スマートシティ/デジタル技術を活用して、都市インフラ・施設や運営業務等を最適化し、企業や生活者の利便性・快適性の向上を目指す都市。
(※2)スマートアイランド/離島地域が抱える課題解決に向けてICTやドローンなどの新技術の実装をはかるべく、国交省が進めている取り組み。
失敗を恐れずに挑戦する。ベイシスにはこのスピリットが社風として根付いており、IoTエンジニアリングサービスもそうして開拓してきました。そしてこれからも私たちの挑戦は続きます。進化するテクノロジーを活用して競合他社との差別化をはかり、社会に役立つ技術とサービスを追求してまいりますので、株主・投資家の皆様には引き続きご支援をいただきますようお願い申し上げます。